災害救助犬Q&A
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NPO法人災害救助犬ネットワークです
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災害救助犬とは

 地震や災害などで瓦礫の中に埋もれたり見えない人、ピクニックや山歩きなどで行方不明になった不特定な人たちを、犬の優れた嗅覚を使って探しだす犬のことを救助犬(サーチドッグ)と云います。
 ただ、犬が単独で探すことはなくハンドラーの指示、コントロールの下効率的に作業をすることが人命救助に貢献できる道だと考えています。
 また、犬にとってかくれんぼの遊び感覚なのですが、人間側は真剣勝負の作業になりますので、優れた嗅覚をいつでもどこでも使えるようにするには平時に訓練の積み重ね、準備を整えられているかに左右されます。

訓練 災害救助犬への理解を深めるために、救助隊との連携訓練の必要性、海外の先進国から学ぶ、実働における教訓、救助犬チームの信頼への道筋などの消防救助隊向けの資料があります。
ご希望の方は本部事務局まで。
ウイークポイント 災害救助犬は、いつどこでも完ぺきな要救助者捜索作業ができる訳ではありません。そのウイークポイント、特性を踏まえた上で活用することが、効果的な貢献ができると思っています。
お問い合わせは本部事務局まで。

■どうして要救助者を捜すのか
 見つけられる仕組みは単純です。犬にとっては楽しい遊びであり、楽しいことがあることを訓練を通じて教えていく、成功の積み重ねで生まれ持っている優れた臭覚をうまく使って人を探すようになりますが、感情を持つ生き物なので、ハンドラーとの信頼感、個体特性に見合った継続的な訓練が必要になります。
 地震などによる建物の倒壊や雪崩等で埋もれ隠された被災者とか、山菜採りやピクニックや老人子供の道迷い等での行方不明者を探します。災害救助犬は隠れん坊の鬼役が大好きになるように訓練された犬です。誰から出たのか分からない空気中の浮遊臭を追って、臭いの発生源の人を探します。通行中・作業中・休憩中等、普通の状態の人であれば、平素の訓練でご褒美をくれたり遊んでくれたりしていないので、犬は隠れん坊の相手とは思いませんので次の人を探します。
 隠れたり、倒れたり、しゃがんだりしていれば、隠れん坊の相手、つまり行方不明者です。吠えてご褒美や遊びを相手にねだる、地面や雪を掘る、いつも首に吊下げている札を咥えて戻って指導手を連れて行く等、その犬に応じて訓練された方法で発見を知らせるので行方不明者の居場所がわかるのです。

 警察犬 災害救助犬
足跡等の固定臭をたどる 空気中に漂う人の浮遊臭を追う
足跡臭がないと辿れない ラフト、体臭、呼気でを辿る
川を渡れば足跡は途切れる 風下であれば辿れる
特定臭のみを辿っていく 人を限定せずに探せる
持ち物等の原臭が必要 特定、原臭は必要ない

■犬の適性と訓練
 災害救助犬には犬種の制限はありませんが、狩猟本能のある犬が向いていると言われています。現在の日本では、シェパード、ラブラドール、ゴールデン、ボーダーコリーなどが多いのですが、ダックスフント、ウェルシュコーギーなどの小型犬も、柴犬、甲斐犬などの日本犬も、雑種も災害救助犬になっています。欧米にはもっといろいろな犬種の災害救助犬がいます。
 災害救助犬を育てるには、犬が若いうちに訓練を始めます。まず、意欲付けと言って、例えばボールにじゃれ遊びさせて引張りっこなどのボール遊び、人の指示に従うとご褒美を与え、人がハンドラーとのコミュニケーションがとれる犬にしていきます。次にこのボールを使って、座れ(停座)、伏せ(伏臥)、待て(立止)、来い(招呼)、後へ(脚側行進)などの服従訓練を行い作業犬として使えるようにします。この点が重要で現場で必要なときに必要な作業をしてくれることになります。ある程度服従が出来るようになれば、捜索訓練も並行して行います。まずハンドラーがボールを持ってその場で犬をじらして、犬が吠えたらボールを使って遊んでやります。次の段階では少しだけ離れてしゃがむ、次は少しだけ隠れる、次はもう少し離れるなど徐々に段階を上げて訓練をして行きます。犬がハンドラーと隠れんぼ遊びをある程度出来るようになったら、別の人が同じように隠れんぼ遊びの隠れ役(要救助者)訓練をします。訓練を開始してから認定審査に合格するまでの期間は、犬の資質や訓練の仕方などによって異なりますが、早くても1年以上はかかります。
 認定審査に合格してからも、服従訓練は毎日続けますし、捜索訓練もいろいろな場所、遭難者役{ヘルパー)も年代性別を問わず行い、犬にいろいろな経験を積ませ出動に備えています。
 臭覚は優れていますが、現場はすべて初めての場所になり、周囲の環境に影響されず集中的に作業を自主的に行えるようになるにはかなりの経験値が必要になります。

■いざ出動
 大規模地震などの倒壊家屋捜索では、最小単位として災害救助犬は3頭3名+サポーター+隊長が1チームになって出動します。3頭のうち1−2頭が捜索をして残りの犬が待機します。犬の作業集中持続力を15〜20分程度であり、夏季ならば10分程度として交代して捜索を継続します。犬にとってはご褒美、楽しみがあるからその相手を探すように教えているから現場のように見つからない状態が続けば意欲は落ちていきます。災害救助犬1頭につき1名の指導手(ハンドラー)がついていますが、担当の犬が捜索していない指導手は隊長とともに捜索中の犬を観察します。1頭が行方不明者発見の反応を示したら、同じ場所をもう1頭に確認させます。2頭目の反応が不確実であれば、3頭目に確認させます。2頭が同じ場所で反応を示せば、その場所に行方不明者がいる確率は高いと思われるので、消防・警察・自衛隊などの救助隊にその位置を知らせて救助作業要請します。
 山野などでの行方不明者の捜索方法としては、ひとつの登山道を災害救助犬で受け持った場合、犬が数頭いれば偵察班と確認班に分けます。殆ど場合、道に迷ったか、滑落したかで登山道沿いにいることはなく捜索範囲の見当がつけにくく広範囲な捜索になります。そのために偵察班は先行して、人の臭いがあるか軽く浅く探索しながら進みます。何らかの臭いを感じた様子を犬が示したら、近くの木にテープを巻くなど、目印をつけてそれ以上は深追いせずに先に進みます。確認班は印のない場所は通過して、印の着いている場所のみを深く詳しく捜索します。救助犬の頭数が少なければ、往路は偵察に留めて、復路に確認をするなど、犬のスタミナの消耗を防ぎながら捜索をしなければなりません。
 出動している災害救助犬、指導手の能力、人数を勘案しながら最良の方法を隊長が判断して作業を行います。
 行方不明者や遺留物を発見したら、携帯や無線等で救出チームに連絡をとります。救急車やヘリコプターなど応援を呼ぶこともあります。場合によっては、傷の応急手当て等を救助犬チームが行うことが必要になるかも知れませんが、今は捜索、発見までの作業で協力するようにしています。
 犬のケア




災害救助犬Q&A

Q1:救助犬の名の由来は何ですか? 17世紀中期、スイスのアルプス山脈に住む修道士たちが、自分たちの飼っていた犬を、雪山で道に迷った人や、動きのとれない登山者達を捜索するために訓練していたことから由来します。
Q2:どんな種類の犬が救助犬になれますか? 犬種、血統は問いません。ただ、病弱な犬や意欲、気力のない犬は不向きです。大事なのは犬の能力と性格です
Q3:救助犬に向いている犬種は何ですか?

ジャーマン・シェパードラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバーベルジァン・マリノア・シェパードボーダー・コリーなど警察犬、牧羊犬など歴史を持つ犬種が向いています。しかし、この犬種でなければという規定はありません。阪神大震災に出動したスイス隊には、いろいろな犬種類で任務にあたっています。

Q4:救助犬に向いている性格は?

1.人や他の動物に対して、攻撃性がないこと。
2.臭覚が優れ、動作が機敏であること。
3.捜索に対して強い意欲があること
4.集中力と忍耐力があること。
5.体力があり持続力があること。
6.突然の物音や出来事に恐がらないこと。
7.高い所や暗い所をこわがらないこと。

Q5:どうしてそういう性格が必要なのですか? 救助犬の仕事場は、山岳地域や原野、家屋が倒壊しているような足場の悪い状況です。そして、様々なレスキュー活動の人がたくさんいて、たいへん混乱していますし、その人たちの匂いもいっぱいです。そのうえ、火災跡の煙やニオイ、消防車や救急車のサイレンの音、ヘリコプターの騒音と、大混乱の状況の中でも、救助犬は集中して人間を捜索しなければなりません。そのために、こういった困難に直面してもあきらめない勇猛果敢な犬でないといけないのです。
6:警察犬と救助犬の違いは何ですか?

警察犬…犯人や特定の個人の匂いを覚えさせて、かすかに残った匂いをたどりながら犯人を追いかけます。
救助犬…捜すひとの匂いがわからなくても、空中に漂う浮遊臭を察知し匂いの素をたどって、行方不明者を自分の力で捜し出します。これは警察犬にはできないことです。

Q7:訓練はいつごろから始めるのですか? 生後60日を頃から馴致(社会見学)を十分させ、排便のしつけなどしながら、6ヶ月くらいまで愛情をもって接してあげましょう。
専門的な基礎(服従)訓練は、それから始めるのがよいでしょう。
平均的には2才までに救助犬になることを目標に訓練していきます。
8:救助犬はどうやって人を発見するのですか? 人間より数千倍とも数万倍と言われる優れた嗅覚を使って、人の目では見つけにくい人を捜しだします。行方不明者を発見したら、その場所で大きな声で吠えたり、ひっかいたりして知らせます。
Q9:救助犬はどんな訓練をしているのですか? 1.犬と人がおたがい信頼できるように訓練:人とのスキンシップ
2.服従訓練:指導手の指示に従うように訓練
3.環境訓練:特殊な環境やさまざまな現場で、状況に応じた捜索作業ができるように訓練。
4.救助訓練:生存者を正確に発見して、発見後に指導手へ吠えて知らせることができるように訓練します。
10:訓練を持続させるのに必要なことは? 指導手の優しい(厳しい)掛け声や、体を撫でる事、ボールなどで遊ぶ事によって、犬の捜索意欲を刺激して続けさせます。
11:食べ物はつかわないのですか?

訓練中に、常に食べ物を使えば、捜索中に注意力が分散することがあるので薦めることはしていません。初歩訓練時には食べ物を使う事があります。ただし、指導する人の錬度が必要となります。

12:救助犬が試験に合格するまで、どれぐらい費用がかかりますか? 一般に訓練は生後6ヶ月ぐらいから始め、18ヶ月で基本要素を訓練することができます。約1歳半〜2歳ぐらいで救助犬の資格を取ることができます。しかし期間は、犬の能力、性格によっても違いまので、費用固定ではありません。また、認定されたから、終わりではありません。むしろ、それからが能力を維持する事が大変かもしれません。
13:救助犬の訓練をする場所はどんなところで行いますか? 考えられるさまざまな現場を想定して、瓦礫の下や草むらの中、季節によっては雪の下、材木置き場や工場等、いろんな状況に対応できるように、いろんな人に協力してもらって、いついかなるとき、いかなる人でも発見できるように訓練します。
Q14:救助犬になれる確率はどのくらいですか?

無差別に選んだときは、100頭の犬の中に、8頭ぐらいの犬が救助犬に適していると見られます。この8頭の中で、完璧な救助犬になれるのは、4頭ぐらいです。ですから、成功率は4%ぐらいです。

Q15:救助犬先進国では認定基準はありますか?日本ではどうですか?

救助犬の先進国である欧米では、すでに認定基準があります。
日本では、民間の各団体が独自の審査基準を作り、認定を行っています。育成の目的によって認定基準は異なるため、日本では基準はありません。日本では認定統一は急がれる課題です。

Q16:先進国の救助犬機関では、クラスの分類をしていますか?

分類されています。大枠は以下の様に分類されています。
A級…服従
B級…A級と、初歩、野外(山、森、草原)、家屋等の倒壊現場
C級…A級、B級と雪崩、水難(溺者)
A級を通過してB級に進めることができ、最後にはC級を認定されて、完成させます。これらも統一基準は日本での課題です。

Q17:試験を受けるときに必要なことは?

指導手は18歳以上の心身ともに健康であること。
救助犬は人や他犬に対して攻撃性がないことが必要です。

Q18:どんな審査課目で審査していますか? 基本服従態度、ハシゴ、トンネル、シーソーなどの障害物通過。
災害想定現場での捜索作業。山野での行方不明者捜索作業等に基づいて審査します。何れも指導手の指示のもと、犬には楽しい作業で自主的に作業をする意識があることが重要です。
Q19:合格した後も訓練を続けるのですか? 合格した後でも、必ず訓練は続けなければなりません。訓練を続けないと、救助犬の能力・意欲が低下します。
20:資格の期間は? 救助犬の能力維持、指導手の救助犬育成意欲向上につながるので
認定期間は2年間としています。期間経過後は再受験となります。
21:どうして永久ではないのですか?

救助犬の先進国の欧米では、捜索能力を確保するために8歳以下の救助犬は、3年に1回再審査を受けなければなりません。ネットワークでは8歳以上でも区別はしませんが、それに準じて定期訓練会で能力をチェックしています。

Q22:救助犬はどんな現場で捜索できますか?

1.地震等で建物が倒壊した現場。
2.土砂崩れ現場

3.雪山での遭難現場。
4.電車や飛行機事故現場
5.山林等でピクニックや山菜取りでの行方不明者の捜索
6.痴呆症者の行方不明時の捜索
 等さまざまな場所で作業をします。

Q23:捜索作業に影響する要素は何ですか?

1.風向き
2.天候

3.地形

4、作業意欲

5、集中力、持久力、体力
 等々、いろいろな影響しますが、その要素を指導手が的確に判断して作業させなければなりません

24どれぐらい捜索を続けられますか?

集中力が続く約20分ぐらいです。休憩をとった後、続けて捜索することは出来ます。3頭交代で捜索すると4時間ぐらい続けられます。
気象条件によっても捜索のできる時間が違います。
山岳のような広い場所での行方不明者の捜索では、むやみに捜すことは犬の体力、集中力の持続が難しいので、手がかりを辿りながら僅かな犬の反応を見て、その場所を集中的に捜索するようにします

Q25:嗅覚は、どれぐらい遠くまでわかりますか? 風のない広い場所では10mぐらいまで。風のあるときは、風下なら数百mも不可能ではありません。雪の中なら深さ約2〜3mぐらいですが、隙間があり臭いがとれる状況ならばかなり期待できます。
Q26:救助犬は何歳ぐらいまで働けますか? 救助犬の働き盛りは、3歳〜8歳ぐらいまでの間です。8歳以上でも認定に合格した犬は続けることが出来ますが、体力的に難しくなりますので現場を選んで作業をさせます。
27:救助犬はどうやって生存者と遺体を判別するのですか? 人は亡くなってから8時間ぐらいは、まだ生きている時の臭いがします。救助犬はこういう臭いに対しては敏感で、行動も積極的に吠えてしらせますが、人は死んでから8時間以上経つと、遺体臭になり、そういう臭いに対しては戸惑う姿を見せます。これらの犬の反応を災害現場で正確に見分けられる指導手であることが大事です。しかし、災害発生後、生存者を一刻も早く救助する事が最優先であり、それを救助犬に専念させなければなりません。
Q28:救助犬の住環境はどんなところがいいのですか? 災害時を想定して、災害現場の悪い環境に適応させるため、普段から一頭ずつ専用輸送箱に住ませる事がベターです。訓練や仕事を終えた後も輸送箱(バリケン)の中で安心して休ませる事が一番です。
Q29:救助犬は人を咬んだりしないのですか? 咬みません。救助犬は、人や犬に対して脅迫性や攻撃性を持っていない事が前提です。
Q30:合格する前に災害現場で捜索させることはありますか? 救助犬は受験、認定されたときから「救助犬」となる訳ですから、合格する前に捜索現場で作業はさせません。それは社会、被災者の家族に対してもよくないことです。